こんにちは、ソーシャルメディアマーケティングのエキスパートStatusbrewです。

マーケター、ソーシャルメディア担当者の皆さん、これまでソーシャルメディアでネガティブコメントを受けたことはありますか。また、ネガティブコメントを受けた時、どのように対応されましたか。ネガティブコメントを受けた時、対応に迷われた方も多いのではないでしょうか。ポジティブなコメントを受けるのとは異なり、ネガティブコメントをもらうと、心身面でも辛いかと思います。

そもそも、なぜ人はネガティブコメントを送信するのでしょうか。国ごとにどのような差異があるのでしょうか。どのようなコメント(レビュー)の種類があるのでしょうか。どうしたら、ネガティブコメントに対しても、真摯に適切な対応ができるようになるのでしょうか。

今回の記事では、上記に挙げたことを1つずつ明らかにしていくため、

まず、世界中のソーシャルメディアマーケティングの知見と最新情報を元に、ネガティブコメントの背景に迫り、その後マーケティングの視点からのネガティブコメント対応方法について記します。

1.そもそも人はなぜネガティブコメントを送信するのか?

引用:カスタマージャーニーって何?概念と基本を5分で理解する(https://mieru-ca.com/blog/customer_journey/)

皆さんは何かのプロダクトを購入する際、何かしらの「困りごと」を抱えており、その困りごとをより良くまたは解決するためにプロダクトを購入します。その購入に至るまでの間に、情報収集や比較検討を行い、購入というプロセスに至ります。情報収集や比較検討をおこなっている間にも労力を費やし、その分プロダクトに関する期待値も高まります。その期待値と同等またはその期待値を上回った場合、そのプロダクトのリピーターとなる確率が高くなります。

良い経験をすると、人は自然に他者に伝えたくなり、オンライン、オフライン双方での共有拡散が自動的に行われます。

一方、購入していたものに不備があったり、期待値と異なった場合も返品やネガティブコメントと言った形で、オフライン、オンラインともに共有拡散が行われます。

消費者がネガティブコメントを送信するには主に以下のような理由が挙げられます。

(1)謝罪を求めている

(2)他の消費者にそのプロダクト(製品・サービス)について警告している

(3)企業側に問題点の対応を求めている

(4)企業の成長に期待している

(5)不満・改善点を直接ぶつける

上記のように、そのプロダクトに対する’’正直な思い’’を企業に対して直接的に伝えられかつ、企業だけでなく、他の消費者も閲覧でき、企業イメージにも関わってくるのが、ソーシャルメディア内でのコメントやレビューになっています。

カスタマージャーニーマップに、感情の動きが起こるタイミングを落とし込んでみました。この中のどのタイミング、フェーズでも、ユーザーはソーシャルメディアにコメントを落とすことができるのです。

2.これまでネガティブコメントを送信したことがあるかないか調査!

(1)自分のソーシャルメディアでプロダクトに関する苦言または企業のソーシャルメディア内に直接苦言コメントを送信したことがあるかどうか調査

(2)インターネット上におけるレビュー書き込み経験調査

上記2種類の調査をインスタグラムストーリー上で行いました。

まず、(1)の直接的または間接的にソーシャルメディアを用いて企業のプロダクトに対し苦言を出したことはあるかという問いに対して、あると答えた人は15%、ないと答えた人は85%となりました。実に85%もの人が自身のソーシャルメディア上や企業のソーシャルメディアに直接苦言を出したことがないと、レビュー評価のような場所ではなく苦言を呈するコメントを残す人は直接・間接的どちらであってもかなり低いことがわかりました。(有効投票数55)

次に、コメントからレビューというように一般的に評価を行う場所と認知されているやり方に書き込み基準を変えました。「これまで、購入したプロダクトに対してインターネット上でレビューを書いたことはありますか。」という問いに対して、有効回答数112のところ、48%がこれまでにインターネット上でレビューを書いたことがあると答えました。実に半数の人が、これまでにインターネット上でレビューを書いたことがあるという結果になりました。

さらに書いたことがあると答えた人の中で、高評価レビュー(ポジティブレビュー)、低評価レビュー(ネガティブレビュー)、両方とも、というようにどのようなレビューを書いたかについて質問をしたところ、高評価レビュー(ポジティブレビュー)のみ52%、低評価レビュー(ネガティブレビュー)のみ8%、高評価レビュー、低評価レビュー両方とも40%という結果になりました。

この結果をまとめると、

1.苦言を呈するようなネガティブコメントを送ったことがある割合は少ない

2.低評価レビューを送ったことがある人の割合も少ない

ということが分かります。

このような結果から、苦言を呈するネガティブコメントや低評価レビューはポジティブコメントや高評価に比べ顧客にとって書くハードルが高いと考えられます。

つまり、ネガティブコメントは書き手である顧客にとっても、読み手である企業関係者にとっても難しいものであるということがわかります。

3.国別によるネガティブコメント傾向考察

引用:1.5 Cultural Characteristics and Communication

https://open.maricopa.edu/com110/chapter/1-5-cultural-characteristics-and-communication/)

アメリカ出身の文化人類学者 Edward T. Hallをご存知でしょうか。彼は、異文化コミュニケーション学の先駆者です。彼の研究によると、国や地域におけるコミュニケーションのスタイルには違いがありそれぞれ特徴を持ちます。その中で、言葉そのものに重きを置くドイツ語など北米、西欧諸国言語に多く見られるローコンテクストか、言葉以外の仕草や雰囲気などの意味に重きを置く日本を含むアジアやアフリカ諸国に多いハイテキストの2つに大きく分けられます。

そもそも、言語的特徴としてほとんど全てを言葉で伝えるローコンテキスト文化であるスイスドイツ語やドイツ語と、行間をも読むほど言葉以外の表情や感情などの要素に重きを置くハイコンテキスト文化の日本語では、使用する言語によって言葉の特性上の違いからコメント傾向は変化すると考えられます。

以下、実際にハイコンテキストとローコンテキストでは言語的差異からくる文化的な違いが一般的にどうあるのかを確認した上、その次に実際にソーシャルメディアでどのようなコメントがなされているのか例を示します。

ローコンテキスト

ハイコンテキスト

コミュニケーション

コミュニケーションタイプ

明示的

暗示的

コミュニケーションの重点

言語的コミュニケーション

非言語的コミュニケーション

メッセージの文脈

あまり意味を持たない

非常に重要である

丁寧さ

あまり重要でない

非常に重要である

他者へのアプローチ

直接的

間接的

文化的志向性

感情

感情は影響しない

感情は非常に重要である

時間的志向性

現在-未来

過去

グループ傾向

フレキシブル-移り変わる

内輪で強固な関係

アイデンティティ

個人的-独立

社会システムを重んじる

バリュー

独立かつ自由

伝統かつ社会規範

ビジネス

ワークスタイル

個人主義

全体主義

ワークアプローチ

仕事業務ベース

チームベース

ビジネスアプローチ

競争を重視

協力を重視

学び方

知識は転移可能

知識は状況依存的

販売志向

ハードセル

ソフトセル

これらの違いから、ローコンテキストの言語を有する地域では、考えたことを全て文字に、ネガティブコメントもはっきりと明示的に述べられ、逆にはいコンテキスト言語を有する地域では、考えたことの一部のみを文字に思いを伝える傾向にあると考えられます。

以下は、ハイコンテクストである日本とローコンテクストであるドイツ語・英語のソーシャルメディアコメントを比較するための図です。

1組目は日本のUNIQLO公式アカウントと英語でのUNIQLOアカウント、双方同時期の投稿に対するコメントです。

プロダクトに関するコメントに加え、ロシアとウクライナ戦争による世界情勢で、ロシア店舗の閉鎖を求める声がどちらのアカウントでも見られました。

日本語では、「ロシアのお店は全店閉店してください」とのみ述べられていたのに対し、

英語では、上記の言葉に加え、「ウクライナの人を戦争から守るために閉めるべきだ」、「ロシアに税金を流さないことを目的としている」、「ユニクロのファンだけれども、適切な行動を撮らない限り不買運動を続ける」などより直接的なコメントが見られました。

次に、ドイツの代表的家電メーカーであるMieleと、日本の代表的家電メーカーであるPanasonicのインスタグラムコメントを見比べてみました。

日本語のネガティブコメントでは、Panasonicの衣類スチーマーに関するリールに関して、

「ハンガーにかけたままだとシワが伸びない」「すぐ壊れた」など状況を表すネガティブコメントが見られました。

一方、Mieleの掃除機をPRするリール内で撮影モデル犬が紙を散らかす役として映されていました。そのリールに関して、「犬の権利を考えず、このように犬を使用していることにとても残念に感じる。もっと有用な見せ方があるはずだ。チーム内でもう一度話し合ってください。」と言うように感じたこと、考えたことなど現在の状況に関するネガティブコメントに加え、それに至った背景やその次にしてほしい行動指針まで述べる例が多く見られました。

これら具体的にソーシャルメディアを比較することによって、実際にハイコンテキスト言語である日本語が使用されていると、全ては述べず一部をネガティブコメントとして送信する傾向に強いことがわかりました。

ハイコンテクスト言語を話す地域では、実際対面でネガティブコメントを述べる際、表情や仕草、声質などのその他の要素を得られるため、企業担当者はネガティブコメントの状況や背景を理解することができますが、ソーシャルメディア上となると、その文面以外の要素は得ることができません。

そのため、ネガティブコメントがより強く感じられやすい傾向にあると言えます。

4.ソーシャルメディア(SNS)における顧客からのコメントの種類

ソーシャルメディアにおけるコメントには、以下のような種類があります。

(1)ポジティブコメント

-さらに細分化すると、ふわふわ言葉のみ述べるポジティブコメントと、どの部分が良いかより具体的に述べるポジティブコメントがあります。

(2)ネガティブコメント

-さらに細分化すると、こちらもただ、最悪だ。期待に沿わなかった。買わない方が良い。というように満足しなかった有無を述べるネガティブコメントと、どの部分が悪かったか、どの部分が期待にそぐわなかったか、どうすれば改善されると思うかを含めながら記載されるネガティブコメントがあります。

(3)質問コメント

-投稿内容から理解することができなかったポイントや、投稿内での間違いを指摘してくれる質問、投稿内容から派生した質問などが送られます。

(4)アンチコメント

-アンチコメントは、プロダクトに関するコメントではなく、ただ企業やその企業にいる人を侮辱、妨害するチクチク言葉のコメントを指します。

4-1それぞれのコメントの種類に対する捉え方<

以下ではそれぞれのコメントに対する捉え方について記します。

先に述べると、ネガティブコメントとアンチコメントをしっかり把握することが重要です。

ネガティブコメントは、アンチコメントとは異なりあなたのプロダクトをより良くしてくれるアイデアが詰まっています。

(1)ポジティブコメント

-ポジティブコメントは、あなたのプロダクトが現在どのように評価され購入されているか強みを知ることができます。また、読んでいて、あなた自身が嬉しい気持ちになることができるでしょう。強みをさらに活かすように考えることができます。

(2)ネガティブコメント

-ネガティブコメントは、読むと辛いかもしれませんがこのネガティブコメントこそ企業をより良くするための重要な要素となっています。どの部分が満足しなかったかを述べられていなくとも、どの部分に満足しなかったかコメントで尋ねるなど適切な対応ができるよう心がけ、どのような点がネガティブコメントに繋がったかしっかり把握できるようにしましょう。

(3)質問コメント

-あなたのプロダクトやあなたの企業に対し、関心を示し興味を示してくれています。質問コメントは、1人の顧客が疑問を持つなら他の顧客にとっても同じく疑問点となっているという考えを持ちましょう。

(4)アンチコメント

-アンチコメントと考えられる質問が本当にアンチコメントであるか、まずはネガティブコメントでないか考えましょう。そのコメントが本当にアンチコメントであると判断した場合は、あなた自身傷つく必要は一切ありません。

5.マーケティングの視点からのネガティブコメント対応方法

日本企業がソーシャルメディアを運営する際、アンチコメントだけでなく、ネガティブコメントに対しても全て返事をしていない例が多く見受けられます。その理由として、これまでStatusbrewが聞き取りを行ってきた結果以下のような理由が挙げられます。

・コメントの返答を一律にするためのソーシャルメディアポリシーがないがために手を出せていない

・コメントの監視と返信をするための人材がいない

・オペレーション不足かつそもそも自動化の仕組みを構築するまでの労力を費やせていない

・コメントの返し方によっては、言葉遣いやニュアンスの違いから誤解を招く、余計に反感を買ってしまうと恐れている

企業のプロダクトをソーシャルメディアで発信するよりも、どう顧客と実際にコンタクトを取り、コミュニティ形成を行えるかが非常に重要となっています。コメントに対応せずに掘って置く、いつも同じ内容のコメントしか返さない、ネガティブコメントには返事をしないとなると企業の印象は悪くなります。

皆さん自身も、購入する際に実際に他の方がどのようなコメントをしているか確認したことがあるのではないでしょうか。今一度、コメント対応について見直す必要があります。

実は、ネガティブコメントは企業の信頼性を増しているという現状があります!!

顧客は、情報収集・評価比較検討を行う際ネガティブなレビューも含まれている方がやらせのない本物のレビューだと消費者に感じてもらいやすく、なおかつ消費者はポジティブコメント・ネガティブコメントどちらも同じ程度信用されることが明らかになっています。

ネガティブレビューは企業の状態を真に表し、その対応次第では、信頼性の向上に繋がり、企業イメージ、企業ブランドを良くすることに繋がります。

企業マーケターやソーシャルメディア担当者の方々は、「ネガティブコメント、低評価レビューは顧客にとっても書くハードルが高いものである。しかし、勇気を出して書いてくれた。ネガティブコメントや低評価レビューこそ企業をより良くする源泉である、財産となる。」といった視点を持つ必要があります。

そして、ネガティブコメントに対しても、なぜそのようなことが起きたのか(Why)、どのようなことがいけなかったか(How)、これから何を行うか(What)、いつそのようなことが起きたか、いつまでにそのような対処を行うか(When)、どこで解決されるか(Where)、どの部が対応するか(Who)、

これらの5W1H要素を意識しながら、ネガティブコメントに対して返信をする必要があります。

引用:顧客の意見を恐れるな!消費者調査で分かったカスタマーレビューに対する意識

出所:顧客の意見を恐れるな!消費者調査で分かったカスタマーレビューに対する意識

人手不足やソーシャルメディアポリシーがない故ネガティブコメントに対して返信をできていない企業がそれらの問題を解決する手段があります。

あらゆるソーシャルメディアのコメントを一元管理することができたり、コメントの種類を分析することができたりするツールを導入することをお勧めします。

これにより、人数が少なくてもソーシャルメディアを管理・運用することができるようになり、ネガティブコメントに対しても、返事を返しやすくなります。

6.ネガティブコメントに対する対応まとめ

ネガティブコメントに返信をすることは、ソーシャルメディアマーケティングの観点から非常に重要な意味を持ちます。

言語的差異から、日本語のようなハイコンテクスト言語では、コメントでは行間を読むことができずネガティブコメントがなぜ送られたかの部分が省略されてしまい、わかりにくいことも多々あります。しかし、このネガティブコメントこそ、企業が成長するために、信頼度を増すために重要であることがわかりました。

今、対応することができていない企業は、なぜ対応することができていないかを考え、ツールの導入も検討しながらネガティブコメントに対応し、ソーシャルメディア内で顧客と繋がり、コミュニティを形成できるようにし、企業の信頼度を向上させられるようにしていきましょう。

ソーシャルメディアマーケティング及びツール導入に関する事柄についてどのような質問もお気軽にお尋ねください。