こんにちは、インド発のソーシャルメディアマーケティングのエキスパートStatusbrewです。
早速ですが、以下のような課題を抱える方が、このブログを読んでくださっていると思います。
・ より多くのオーディエンスにアクセスしたい
・そのためにSNSを活用して海外市場に向けて情報発信したい
海外進出を考える際には、事前の準備が非常に重要です。この記事では、日本企業が自社商品を海外市場に展開する際の戦略・下準備の具体的な方法・SNSの投稿を作る際に役立つAIツールの情報を提供します。
また、こちらの記事も併せて読み、日本企業が海外に自社商品を進出させる際の考え方の部分について参考にしていただけたら幸いです。
ローカライゼーションについて
ローカライゼーションとは?
まずはじめに、ローカライゼーションとは何なのでしょうか。
ローカライゼーションとは、日本語では「地域化」とも呼ばれ、製品、サービス、コンテンツをターゲット市場の言語や文化に適合させるプロセスのことです。
Localizationと書くと、LとNの間に10文字あるので、「L10n」や「l10n」と表記されることもあります。
単なるテキストの翻訳と、ローカライゼーションで異なる点は、ローカライゼーションは現地の嗜好や、慣習、文化に合わせて様々な側面を修正することも含まれる点です。
夏目漱石が「I love you」を「愛している」と直訳するのではなく、「月が綺麗ですね」と訳しなさいと学生に言ったという伝説も、当時の日本人の文化に合わせて訳したという意味で、ローカライゼーションの一例だと言えるでしょう。
他にも、
・ユーザーインターフェース(UI)要素 ・文化的参照(シンボル、アイコン、慣用句など) ・ 画像やグラフィック ・日付と時刻のフォーマット ・ 価格、通貨、支払い方法 ・測定単位 ・ 法律と規制の枠組み ・ブランディングとメッセージング* ・マーケティング・コンテンツ(ブログ記事、ランディングページなど)* ・プロモーション・チャネル(検索エンジン、ソーシャルメディア、有料広告など) ・ヘルプコンテンツ ・カスタマーサポート・チャンネル(ナレッジベース、チャットボットなど)
などを、修正することがローカライゼーションに含まれます。
ローカライゼーションを取り入れることで、企業は顧客とのコミュニケーションを改善し、ブランド認知度を高めることができます。言語や文化の違いにより、同じメッセージを効果的に伝えるためにはローカライズされたコンテンツが必要です。ローカライズすることにより、企業はグローバルな市場でより競争力を持ち、成長を推進することができます。
ローカライズしないのはもったいない!ローカライゼーションはなぜ重要?
76%の顧客が母国語で情報提供された製品を購入することを好むという調査が表すように、ロ言語や文化に適合したコンテンツを提供することで、顧客が企業とのつながりを感じ、購買意欲を高めることができます。
また、地域にあったブランディングをすることで、その地域で売りたい商品をプッシュすることが出来ます。
ローカライズされたSNSのアカウントを別で作り、ターゲットの地域に向けて発信することは、その労力や費用の少なさに反し、高い効果を発揮します。
逆に、SNSのローカライゼーションが進んでいないと、
・国際的な視聴者や他の言語を好む地元市場を逃す・ 手頃な価格のソーシャルメディア・マーケティングを活用できない・海外のオーディエンスに意図を効果的に伝えることができない・アダプションに繋がらない
といったデメリットがあります。ローカライズされたSNSを用意しないことは非常にもったいないです。
ウェブサイトや広告のローカライゼーションは、ハードルが高いかもしれませんが、ローカライズされたSNSの運用は、チームに英語話者が居なくてもある程度可能です。
海外進出の第一歩として、日本国外に向けて、現地の言葉で情報発信を初めてみましょう。
ローカライズする際に抑えるべきポイント
1.リーチしようとしている市場の標準を調査する
ターゲット市場の文化や法律、規制について十分に調査し、特にSNSプラットフォームの規制に留意します。例えば、インドではTikTokは国単位の規制により使えません。インドのように国の規制がある場合、他のメディアを使うなど対応策を考える必要があります。
2.別々のアカウントを使用する
異なる地域や言語向けにコンテツを提供する場合、別々のSNSアカウントを作成し、それぞれのアカウントをローカンライズして運用します。これにより、ターゲット市場に合ったコンテンツを提供できます。同じアカウントで、多言語のキャプションをつける事も出来ますが、一貫したメッセージを発信するためにもアカウントは分けて運用することをおすすめします。
3.ローカライゼーションを念頭においてコンテンツを作成する
コンテンツ制作時に、ローカライゼーションを考慮してコンテンツを作成しましょう。言語や文化に合わせたコンテンツを最初から計画し、翻訳や修正が容易になるように設計します。
4.投稿する前に、内容に問題が無いか確認する
コンテンツを投稿する前に、内容に問題や誤解が生じないかを確認します。文化的や宗教的にセンシティブな内容や、法的な規制に違反した内容、誤解を生むような内容が無いかを確認し、炎上を起こさないようにしましょう。すき家はローカライズしていますが、一度Instagramで「牛肉」を使っていると思わせるような内容を、牛肉食がタブーであるインドで投稿したことで波紋を呼び、謝罪訂正をしていたことがあります。
ローカライズの事例紹介!インドに進出したベビーブランド
ここで海外市場の一つであるインドに進出したベビーケア製品を取り扱うブランドがローカライゼーションの際に最も気をつけた3つのポイントについて紹介します。
①ローカル特有の課題特定 ②ローカル特有のブランドに対するエモポイントの ③インドトレンドビジュアルをしっかり入れる
を必ず意識すると、マーケティング企業Storytellingの担当者は訴えます。
現地の特有の課題やブランドに対するエモーショナルを感じるようなストーリーラインを入れることは最も海外進出において注力されるべきところですが、
舞台はインド
ベビーケア製品
という二つの軸に対してのアプローチに必要な事前知識をローカルの「家族至上主義」「母親 = 神様のような存在」「子供セントリック>しつけ」という根付いた文化を傷つけずサポートするようなシーンが多く組み込まれています。
https://www.instagram.com/reel/C8ouI5QSwVv/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
また、より文化的な背景を認知したコンテンツの制作がとても重要とされる、「一歩間違えたらブランドを守れない」事態になりかねない事前知識もあります。
とても良い例が、母乳育児が最も大切とされるインドにおいて、「粉ミルクでの育児をプロモートしている」と思われるような製品の使い方やコメントはNGであることも、これらのコンテンツを見るとよく練り込まれていることが伺えますね。
逆に、他の投稿と比べて伸び悩んだ投稿の例も紹介します。
https://www.instagram.com/reel/C8t5wdBy7J7/?utm_source=ig_web_copy_link
これはベビー用の洗濯洗剤のプロモーションのために、「子供と母親が絵の具を使って、布いっぱいに絵を描いたり、お互いの顔にペインティングする親子の交流」を動画にしたものですが、
クリエイティブな脳を刺激するアクティビティはアメリカのような西洋文化では受け入れられるようですが、インドでは「絵の具が顔につくことがケミカルに感じる」という健康的な要素を心配するという面で伸びなかったという反省点もあるようです。
ローカライズするためにまずするべきこと
ローカライズされたコンテンツを作る前に、ローカライズされたアカウントとスタイルガイドを作ることから始めましょう。一つのアカウントに複数の言語で記述し、異なる言語圏に発信することも可能ですが、世界観がぶれてしまい、メッセージ力が弱くなるため、それぞれの地域に向けて異なるアカウントを作成することをおすすめします。
ターゲットの地域での、ブランドの世界観・ブランドが提供する価値を設定する
スタイルガイドの作成
コンテンツの作成
投稿内容のチェック
の流れでローカライズされたSNS発信を進めることを提案します。
ターゲットの地域での、ブランドの世界観・ブランドが提供する価値を設定する
ソーシャルメディアの中で海外進出をするにおいて、
・自社ブランドを全く知らない人に認知してもらうこと
・自社ブランドを使ってどういった感情体験をしてほしいかまで、実利的価値だけでなく「こんなに素晴らしい商品が日本にはあります、ぜひみて欲しい、伝えたい」とエモーションを乗せて語りきること
が求められます。
そのため、ローカライズされたSNS発信をする上で最初にする作業は、進出する国で自社の商品をどのように売りたいか、どんな価値を提供することが出来るのかを明確にすることです。
バリュープロポジション・ターゲットを明確にする
まずは、売りたいターゲットの解像度を上げる為にペルソナを作りましょう。
ペルソナとは、自社の商品やサービスの理想的な顧客像の事です。例えば、「肥満に悩む30代〜40代の男女」をターゲットとしたとします。しかし、「肥満に悩む大人」をいっても
・結婚しているのか、していないのか ・自分の肥満に悩んでいるのか、パートナーの肥満に悩んでいるのか ・欧米式の食を好むのか、伝統的な食を好むのか ・運動不足で肥満なのか、食べ過ぎで肥満なのか ・都市に住んでいるのか、地方に住んでいるのか ・ 品質を重視するのか、価格を重視するのか
などなど、「肥満」「大人」という要素は共通していても、個々の欲求、ニーズ、課題などは、ひとくくりにすることは出来ません。
そこで、ペルソナを使ってより具体的にイメージをすることで、最適なアプローチをすることが出来ます。
ペルソナのテンプレートはネット上に沢山出回っていますが、・名前 ・ 年齢 ・職業、年収 ・家族構成 ・居住地 ・ Bio(プロフィール) ・意思決定の要因 ・好きなブランド ・目的・ゴール ・悩み・不満
などが一般的にペルソナを設定する際に考えられるポイントです。
想像だけで作るのではなく、調査も併せつつよりリアルなペルソナを設定するよう心がけましょう。
二人~三人ほど考えられると理想的ですが、まずは一人でもいいのでペルソナを作ってみましょう。
その後、共感マップを埋めて、ペルソナをより深く理解します。
特に、ペルソナの「目的・ゴール」や「悩み・不満」をより実感を持って理解するのに友好的です。
1から7まで順番に埋めてみましょう。
1.誰に共感しようとしているのか
例
・誰を理解したいのか?
・どんな状況にある人なのか
・どんな役割を果たしているのか
2.何をしなければいけないのか
例
・何を異なってしなければいけないのか
・どんな仕事を終わらせなけばいけないのか・
どんな決断を下したいのか
・どのようにして成功したかを測れるのか
3.何を見るのか
例
・市場で何を見るのか
・目の前の状況で何が見えるのか
・他の人が言ったり、していることは何か
・情報を得るために何を見て、何を読んでいるのか
4.何を言うのか
例
・彼らから何を聞いたか
・どのようなことをいうと想像できるか
5.何をするのか
例
・今日は何をしたのか
・どのような行動を観察できるのか
・何をしている所を想像できるか
6.何を聞くのか
例
・他者が言っているどのようなことを彼らは聞いているのか
・友達から何を聞くのか
・同僚から何を聞くのか
・人づてに何を聞くか
7.何を考えて、どう感じるのか
Pain 彼らの恐れ・不満・悩みは何か
Gain 彼らの欲求・ニーズ・希望・夢は何か
共感マップを埋める事で特定した、ペルソナの「目的・ゴール」「悩み・不満」は、自社の商品のどの部分・機能が解決するでしょうか?その部分こそが、SNSを通じて発信するべき内容となります。
ペルソナのGainポイント、あるいはPainポイントにアプローチする、ポジショニングステートメントを作ることで、方向性を明確にすることが出来ます。
ポジショニング・ステートメント
テンプレート
(ターゲット・オーディエンス)にとって、
(差別化ポイント)を提供する(ブランド名)は
(ベネフィット)のある(カテゴリー・サービス名)である。
なぜなら(ブランド名)は、他とは違い(理由)だからである。
↓
Statusbrewを例にあげると、
(炎上対策をしたい中小企業のSNS担当者)にとって、
(カスタマイズ性の高いルールエンジンやチームで行えるコメントモデレーション機能)を提供する(Statusbrew)は、
(効率よく確実に炎上を防ぐことをサポート)する(SNS管理ツール)である。
なぜなら、(Statusbrew)は、競合他社と違い(圧倒的に低価格で大規模なチームを受け入れることができる)からである。
市場を調査する
ブランドの価値やペルソナが実際の需要や文化と一致するかどうかを確認するために、市場調査を実施します。
・市場規模
・顧客のニーズ
・規制・法律・文化・商習慣
などを調査しましょう。
その際に、商品をどのように売りたいのイメージを念頭に置いて、調査をすると効率的です。ペルソナが実際の現実に即しているかどうかは、ターゲット層に対してアンケート調査を行うことで確認することがおすすめです。特に、規制、法律、文化、商習慣などについては炎上や重大なトラブルを避けるためにも慎重に調査します。自社で調査が難しい場合は、現地のマーケティングエージェントやパートナーを探すこともできます。
また、こちらの記事では、CAGEフレームワークというものを使ってマクロに市場を分析しています。コンテンツの作成方法に重点を置いている本記事では、説明しきれなかった部分を詳しく解説しているので、併せて参考にしていただけると幸いです。
どのソーシャルメディアで発信するか決める(国によって人気のソーシャルメディアやSNSの使い方が異なる)
ペルソナはどのソーシャルメディアを使っているか
その国で人気のソーシャルメディアは何か
国による規制などは無いか
の三点に留意してソーシャルメディアを選びましょう。
スタイルガイドの作成
スタイルガイドは、コンテンツを取り扱う際のガイドラインであり、コンテンツの統一感と質を維持するためのものです。自社のチームでコンテンツを作る場合にも、代理店に依頼する場合にも、時間の節約、翻訳品質の向上、統一感の確保、コンテンツのレビューを容易にするために必要となります。
スタイルガイドには、
・ターゲットオーディエンス ・ブランドボイス・トーン ・言語の違い(アメリカ英語、イギリス英語の違いなど) ・キーワードリスト・用語集 ・コンテンツのフォーマット
などを含めましょう。
ブランドボイス
ターゲットオーディエンスは先のステップで定めているため、ブランドボイスから始めます。ブランドボイスとは、会社の個性のようなものです。
例えば、Appleだったら、「シンプル」「革新的」「自信」、コカ・コーラだったら、「フレンドリー」「明るい」「楽観的」のようになります。
独自のブランドボイスを持つことで、ソーシャルメディア・プラットフォームや消費者マーケティングにおいて、他社と差別化し企業を際立たせることや、メッセージングやコミュニケーションに一貫性を持たせるのに役立ちます。
ハイブランドがカジュアルな言葉使いでメッセージング(チャットボットなど)をしたら、高級感が損なわれてしまいますよね。また、カジュアルなブランドが難しい専門用語や華美な言葉を使っていたら、敷居が高く、ちぐはぐな印象を与えてしまいます。
ブランドボイスを設定することで、そのような事を避けブランドの世界観を一貫して発信することができます。
また、既にブランドボイスがある方もいらっしゃるとおもいます。しかし、海外進出するにおいて、ブランド・アイデンティティのコアの部分は残しつつ、ソーシャルメディア上での表現の方法を現地のペルソナに合うように少し変えて、ローカライズしましょう。
CoCo壱番屋を例に挙げると、日本のアカウントと比較してインドのアカウントは、絵文字の使用頻度や言葉の言い回しから分かるようにより「フレンドリー」な性格を持っています。
Hubspotが提供しているブランドボイスのテンプレートを埋めてブランドボイスを完成させましょう。
例)デザイン性の高い防水シューズブランド
ブランドボイスのイメージ。するべきこと・するべきでないことを記載
コンテンツピラーを作る
ここまで設定してから、やっとコンテンツを作り始めます。
まずは、コンテンツの内容の柱、コンテンツピラーを決めましょう。
コンテンツピラーとは、ソーシャルメディアにおいてブランドが発信する内容の、テーマや話題の大まかなカテゴリーの柱のことです。3つ〜4つほど作るとよいでしょう。
コンテンツピラーを作ることによって、投稿のアイデアが体系的になり、メッセージに一貫性をもたせることが出来るようになります。
コンテンツのテーマ (ブランドストーリー / お知らせ / 広告 / レシピ / 取り扱い説明 など)
コンテンツのスタイル(ポスト / ストーリー / リール / ショート動画 など)
コンテンツの案
を書き出してコンテンツの計画を大まかにたてましょう。
ローカライズされたコンテンツを作成する
英語話者がいない場合のAIを活用した英語コンテンツ(あるいは現地語)の作り方は二つあります。
①日本語でコンテンツを作ってから、AIを活用して英語に翻訳する
②AIを活用して、英語でコンテンツを作ってしまう
①の方法で作る際に注意するべき点は、ローカライズを念頭に置いてコンテンツを作ることです。英語話者がいない場合は、この時点から機械を活用した翻訳を意識して、分かりやすく簡単な日本語でコンテンツを作りましょう。特に、主語が分かりやすい文章で書きましょう。
ンツを作る際には、使えそうなツールをいくつかご紹介します。
Chat GPT
現代を代表するAIツールであるChat GPT。言語を操るAIツールとしてChat GPTは非常に優れています。コンテンツの生成から翻訳まで幅広い用途に利用できます。
口調を指定することも可能です。
さらに、プラグインをダウンロードすることによって、さらに便利に使うことができるようになります。
ただし、Chat GPTはあくまで言語モデルであるため、常に正しい情報でコンテンツを作るとは限りません。 信じ切らず、必ず内容が合っているか確認しましょう。
DeepL
DeepLは文脈を理解し、高度でより自然な翻訳が可能なトランスレーターです。
AI ディテクター
AIディテクターを使うことでAI生成の文のように聞こえないか、剽窃が無いかをチェックすることが出来ます。
リライトツール
AIディテクターと組み合わせて使うと効果的です。AIディテクターに問題があると判断された部分をコピーしてここにペーストすると、他の言葉に言い換えることができます。
投稿内容のチェック
投稿する前に、必ず投稿内容のチェックをしましょう。
商品の内容が合っているか:
文化的なセンシビティ
法的な規制とコンプライアンス
言語と文体
以上のポイントをチェックして、投稿内容が問題ないことを確保しましょう。また、定期的なフィードバックや分析を通じて、ターゲット市場の反応をモニタリングし、戦略を調整することも大切です。
最後に、ローカライゼーションとは企業が国際市場で成功するために欠かせない要素であり、言語や文化の違いを尊重し、適切に対応することが重要です。
AIツールの活用は効率を高める手段の一つですが、人間の判断と配慮も不可欠です。最終的には、問題が無いか人の目で必ず確認しましょう。
海外進出の第一歩として、ローカライズされたSNS発信を初めて見てはいかがでしょうか?