みなさんこんにちは、ソーシャルメディアマーケティングのエキスパートStatusbrewです。
以前こちらの記事で、市場にまだ認知されていない未知な商品やサービスをローンチする際に行うべき市場調査から、SNS運用戦略、親和性のあるインフルエンサーの探し方についてご紹介しました。
こんにゃく・インドと言ったキーワードを自身の進出したいと考えている国、商品サービスに置き換えることで、新しい市場での認知獲得・販売拡大のための戦略のヒントとなっていれば幸いです。
ところで、その記事の主題「インドでこんにゃくは売れるのか?」に対する答えは、「売れない」でした。
正確には、「こんにゃくゼリー」は想定したターゲットである「健康や環境を意識する都市部に住む流行に敏感な資金力のある20代」にはフィットしないと言えます。
しかし、アプローチを変えることで、「売れる」と筆者は考えます。したがって、この記事では、異なる視点からインドでこんにゃくを売るための戦略を考え、海外進出時のターゲット設定、コンテンツ戦略、ローカライズについて詳しく説明します。
インドでこんにゃくを売るためには?
ソーシャルメディア戦略を立て、実行するための基本的なステップは
ゴールの設定
ターゲットオーディエンスの特定
ソーシャルメディアプラットフォームの決定
コンテンツ戦略の設計
計画に沿って投稿
データ分析
です。今回は特にターゲットオーディエンスの設定がキーポイントとなっています。
市場の定義を変える
前回の記事では、「ベジタリアン」、「都市部に住む」、「流行に敏感」、「資金力のある」、「20代」をターゲットにしていました。
また、こんにゃくを「ベジタリアンゼリー」として位置づけ、こんにゃくゼリーの競合他社だけでなく、ゼラチンを使用したゼリー・カルギーナンを使用したベジタリアンゼリーを競合として調査しました。
ベジタリアンゼリーと位置づけた理由は、食に関して保守的であると言われるインド人にとって元々認識のあるゼリーは馴染みやすいと考えられたからです。
しかし、
水酸化カルシウムの匂いが、海を彷彿させる
こんにゃく自体だとその見た目から食べ物と認識しづらい
知名度もないため調理の仕方も想像がつかない
ゼリー=子どもが食べるスイーツという認識
といった点が妨げになっています。
そこで、こんにゃくを売る市場を「スイーツ・嗜好品事業」ではなく、食材は食材でも「健康補助食品事業」と定義して、認知を得る、という風に考え直してみました。
例)こんにゃく粉を小麦粉に混ぜて使うことでカロリーカット
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低糖質&ナチュラルフード イデア社 - 製菓製パン用 こんにゃくパウダー
追加の市場調査
インド市場の調査・分析は、こちらの記事で詳細に行われているのでそちらを参考にしてください。
この記事では、それに加えて3C分析を行うことでミクロな視点からもこんにゃくとインド市場を調査します。
3C分析とは、Customers(市場・顧客)、Competitors(競合)、Company(自社)を順に分析するフレームワークのことです。3C分析をすることで、主要な要因に焦点を当て、効果的なマーケティング戦略を作成することが出来ます。
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参考:Web Analytics Consultants Association (WACA) - "3C’s Model (3C analysis business model )"
Customers(市場・顧客)
市場・顧客を分析する際は、
市場規模
顧客のニーズ
顧客の好みと消費者行動
などを調査するとよいでしょう。
市場規模
今回の場合は、「健康補助食品としてのこんにゃく」を売るとイメージしています。
INVEST INDIAによると、
インドの小売市場は2027年に1.1兆ドル、2032年に2兆ドルに達する見込みで、そのうちの63%を食品・食料品が占める
Eコマース市場は2030年までにGMV(流通取引総額)で3,500億ドルに達する見込み
また、
2020年には、インドのパッケージ食品・飲料市場880億ドルのうち、健康補助食品・飲料は11%を占めています(約96.8億ドル)。
このシェアは、2026年には16%、300億ドルにまで拡大すると予想されています。
顧客のニーズ
インドでは
肥満や糖尿病が増加しています
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参考: National Library of Medicine - "Epidemiology of type 2 diabetes in India" 横軸が糖尿病の割合を示す
推定で2520万人の成人が糖尿病前症候群(IGT)を持っており、これは2045年には3570万人に増加すると推定されています。
また、診断されているだけで7700万人が糖尿病で、糖尿病の成人の約57%(約4390万人)が未診断の状態にあるとされています。
参照にした記事:National Library of Medicine - Epidemiology of type 2 diabetes in India
肥満も問題となっています。
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引用:株式会社タニタ - "家庭用医療機器/簡易型医療機器普及促進プロジェクト報告書" p.6
インドでは健康的な食事が求められていると考えてよいでしょう。
消費者行動
インドの消費者は、全体的な健康を向上させるために食事の変更を優先する傾向がますます高まっています。このトレンドは、健康志向の食品や飲み物の幅広い選択肢を提供する新興ブランドの台頭に表れています。
インドの消費者の間で植物ベースの食品や飲み物に対する関心が高まっています。消費者はまた、食事の代替としての健康的なスナック、快適な食べ物、ウェルネス促進を求めています。
スーパーフードの消費が勢いを増しており、多くの業界関係者が便利で伝統的なスーパーフードに強力な基盤を提供しようとしています。また、エキゾチックな野菜や果物に対する関心も高まっています。
インドの消費者は食事に対する意識を高め、健康的なライフスタイルと予防医療に焦点を当てています。これは健康補助食品の採用の増加や食品消費パターンの変化につながっています。
Competitors(競合)
競合を調査する際は、直接的な競合だけでなく間接的な競合も調査しましょう。
直接的な競合他社は、同じ製品やサービスを提供し、同じ種類の顧客と市場に商品を販売する競合のことです。市場で実際に購買する際に、自社の商品と直接比べられる他社の商品とも言えるでしょう。今回の場合では、他のこんにゃく製品会社が直接的な競合他社になります。
それに対し、間接的な競合他社は、異なる製品やサービスを提供しますが、同じ顧客のニーズを対象としています。今回は、健康補助食品(ダイエット食品)会社 が間接的な競合他社です。
ここで注意するべきことは、市場の定義の仕方によって競合他社が変わることです。前回の記事では、こんにゃくを売る市場を「スイーツ・嗜好品市場」と定義していたため、競合他社は「こんにゃく他社」「ゼラチンゼリー」や「カルギーナンを使用したベジタリアンゼリー」が競合となっていました。
しかし、今回は「健康補助食品事業」としているため、「健康補助食品(ダイエット食品)会社」が有力な競合他社となっています。
ターゲット
強みと弱み
戦略
競合他社の独自のセールスポイント(USP)
などを調査しましょう。
競合他社の例:
直接競合ーこんにゃく商品
間接競合ー健康補助食品(ダイエット食品)
Nutrilite BODYKEY
FAT BURNER
Himalaya Ayurslim
Guggulhills
Company(自社)
自社を調査する際も
ターゲット
強みと弱み
戦略
競合他社の独自のセールスポイント(USP)
などを調査しましょう。
ターゲット、ポジションを明確にする
ターゲットオーディエンス
市場調査の結果を考慮すると、インドの健康補助食品市場における潜在的なターゲットオーディエンスは以下のようになります:
健康意識の高い消費者:健康とウェルネスを優先し、より健康的な食品の代替品にお金をかけることを選ぶ人々。
ミレニアル世代
:この世代は食事選択においてより意識的になりつつあり、インドの健康補助食品市場の成長を牽引しています。
ベジタリアンとビーガン:植物ベースの食品や飲料の増加を考えると、菜食主義者とビーガンは重要なターゲットオーディエンスとなる可能性があります。
スーパーフードやエキゾチックな果物や野菜に興味を持つ消費者:新しい食品トレンドを探求し、新製品を試すことに興味を持つ消費者。
前回のセグメントである「都市部在住」および「資金力のある」という軸も引き続き重要なターゲットの要素です。
これらを踏まえてペルソナを作成すると、
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ミレニアム世代の都市部に住む肥満に悩む富裕層
このようになります。
ポジショニング
ペルソナのGainポイント・Painポイントと、それにアプローチするこんにゃくの特徴を強調する形でポジショニングステートメントを作ることで、方向性を明確にすることが出来ます。
どこ(where)の、誰(for whom)の、何(to meet what)のニーズを満たすのか
ペルソナのどのような課題を解決するのか?
ペルソナにどのような利益をもたらすのか?
自社にしかない強みは?
競合と異なる部分は何か?
を考えて、ポジショニング・ステートメントを作ってみましょう。
ポジショニング・ステートメント
テンプレート
(ターゲット・オーディエンス)にとって、
(差別化ポイント)を提供する(ブランド名)は
(ベネフィット)のある(カテゴリー・サービス名)である。
なぜなら、他とは違い(理由)だからである。
(肥満に悩むベジタリアン・ビーガン)にとって、
(食事に混ぜて使うことの出来るこんにゃく粉やこんにゃくライス)は、
(安心で手軽に取り入れられる健康補助食品)である。
なぜなら、他とは違い(普段の食事を大きく変えることなく取り入れられる)からである。
インド市場に合わせたソーシャルメディア戦略設計
ここからは、インド市場に向けたソーシャルメディアの戦略設計をしていきましょう。
インド市場の特徴は以下の通りです。
インドのSNS利用者の特徴
インドのSNS利用者の年齢、性別、興味関心
各SNSの利用者数
インドではtiktokは禁止されている
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参考:ACUMEN - "Digital and Social Media Landscape in India"
年齢と性別
インドのインターネットユーザーの約76.3%は男性で、約23.7%が女性。
特にFacebookの利用者において、男性が女性よりも多い傾向がある。
ミレニアル世代とZ世代がSNS利用の大きな割合を占めている。
ソーシャルメディアの使用の52.3%はミレニアル世代によるもの。
![](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fimages.ctfassets.net%2Fd93e522hu4vq%2F2FANMvNDtdt6RT1F5V0We4%2Fbc196f2e295fd84a729d8373dd73afb2%2Fimage.png&w=828&q=75)
参考:ACUMEN - "Digital and Social Media Landscape in India"
興味関心
インドのSNS利用者は他人に興味を持つ傾向が強い。
Facebookは日常の出来事や思い出をシェアするための人気のあるプラットフォーム。
ビジネス関連のSNSであるLinkedInも広く利用され、ビジネス情報を入手するために活用されている。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーを選ぶ際、フォロワーの属性情報(性別、場所、年齢など)が重要視される。
インドのSNS利用者は特定のインフルエンサーに対して強い興味を持つ。
行動パターンと傾向
インドにおいて、ソーシャルメディアは消費者の行動に影響を与える。ブランドは顧客の選択に影響を与え、これらの顧客は他の購入者にも影響を与え、再購入、将来の収益、および会社の長期的な実現可能性に影響を与える。
ソーシャルメディアから生まれた重要な分野の1つは、製品やサービスの顧客レビュー。顧客のレビューは幅広く利用可能であり、顧客とビジネスの両方にとって有益。レビューは、すべての顧客の意思決定段階に影響を与える。
インドの文化・商習慣
豚のコラーゲンを使って作られるゼラチンは宗教的に受け入れられない
→こんにゃくが芋から作られることを強調
食品の自国生産強化の志向が強い
価格に対して敏感
→価格の正当性を強調。
*価格を下げればよいというものではない。安価にしすぎて飢えをしのぐための手段の一つになり、貧困層がこんにゃくだけでお腹を膨らませた場合、重大な健康被害をもたらす危険性がある。
宗教上の理由で、牛肉を食べられない人や豚肉を食べられない人がいる
*どれほど厳格かはまちまち。一度でも牛肉を調理した調理器具で作った料理もNGな宗派も
→製造過程を気にする。同じ製造ラインで牛などを加工していないか?
インドのお菓子は、小麦や牛乳を使った物が多い
→小麦粉の一部をこんにゃく粉で代用可
ソフトな食感が人気
→こんにゃくの食感はお菓子としてはウケない可能性あり
戦略
これらのインド市場の特性を踏まえて、以下のような戦略がインド市場で使えるでしょう。
Facebookを使う
健康補助食品として認知を得る
コンテンツ
「健康補助食品として認知を得る」、「ヴィーガン製品・宗教規範に触れない製品であることを強調する」際の戦略は、コンテンツを作る際に取り入れることができます。例えば、コンテンツを作る際の柱となるコンテンツピラーをこのように設定してみたらどうでしょうか?コンテンツピラーとは、ソーシャルメディアにおいてブランドが発信する内容の、テーマや話題の大まかなカテゴリーの柱のことです。3つ〜4つほど作るとよいでしょう。
Edutainment (教育とエンターテインメントの組み合わせ)
こんにゃくは、インドではなじみのない食材。クイズなどエンターテインメントの要素とこんにゃくについての情報発信を組み合わせる。
Trust (信頼)
製造過程などを公開する。
Interaction(交流)
返信を積極的にすることで、エンゲージメントを高める。
インドの中華料理の食材ブランドであるChing's Secretも成功事例の一つです。このブランドは、ソーシャルメディアをうまく使って顧客との交流を図り、製品を宣伝しています。
データ分析
ソーシャルメディアマーケティングで認知度を高めるためには、分析とレポート作成が不可欠です。これにより、改善点を明確にし、成果を視覚的に確認できます。
狙ったターゲットにリーチ出来ているか?
エンゲージメント率は?
コンバージョン率は?投稿をみて、購入や購読などの期待した行動を起こした人は何人いるのか?
センチメント分析とソーシャルメディアでのメンションは?ブランドがどのように世間に受け入れられているのか?
などを、分析しましょう。
しかし、データの収集と分析には多くの時間がかかります。そのため、ソーシャルメディア分析ツールを活用し、レポートの自動化がおすすめです。
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結論
海外進出とソーシャルメディアマーケティングはトライ&エラーのプロセスです。仮説を立てて、市場調査、戦略設計をしても成果が出ないこともあります。しかし、そこで違う角度からアプローチしてみたら、また違った結果が得られるかもしれません。
ターゲットやバリュープロポジションを変えてみる、戦略を変えてみる、ローカライズをしてみるなど、様々な方法を試してみましょう。
この記事が、海外進出に向けての一歩を踏み出す際のお役に立てればうれしいです。